米国非居住者の確定申告について

 米国の永住権(Green card test)又は市民権を所持している人は、米国での居住・非居住や米国源泉所得の有無にかかわらず、日本の所得を含む全世界所得を米国で申告する義務があります。この場合、日本で働いていても、米国の税務申告上は米国居住者(Resident)となり、確定申告のForm1040NRではなく1040で申告することになります。

 日本の居住者であれば、日本で所得を申告することになりますが、米国でも日本の所得を含む全世界所得を申告することになるため、結果的には、日本の所得が両国で課税対象となります。このような同じ所得に対する二重課税を回避するために、米国国外所得の非課税措置と外国税額控除があります。

 年間を通じて常に米国国外(日本)に居住している場合(Bona Fide Resident Test)、又は連続する12か月間において米国国外(日本)に330日以上滞在している場合(Physical Presence Test)には、米国国外(日本)で得た給与所得や事業所得等の勤労所得(Foreign Earned Income)につき$102,100(2017年度)を限度として総所得から除外(非課税)することが認められています。 

 例えば、現在日本で5,000,000円の給料を稼いでいる場合、上記の要件を満たせば、米国の税務申告はするけれども税金自体は発生しないことになります。その際、日本で発生した所得を申請(Form 2555)する必要があります。

 また、二重課税の問題を回避するために、米国国外(日本)での税金を米国の税務申告上控除対象とする外国税額控除(Form 1116という制度があります。同様の制度は日本にも存在します。

 米国国外所得の非課税措置と外国税額控除は、いずれか一方を適用することも、両者を併用することも可能です。併用する場合には、$102,100以下の所得については非課税措置を、それを超える所得に対して外国税額控除を適用することになります。

 これらの制度を適用するためには、確定申告書を提出するだけではなく、それぞれに適用される様式(Form)を添付することが条件となっています。

 

 これに対して、米国の非居住者は、米国での源泉所得の内で、米国関連所得(”Effectively connected U.S. Source Income”)についてのみ課税の対象となります。

 この米国関連所得とは、米国での給与所得や事業所得などの役務の提供の対価として発生した所得や、米国の不動産の売買や賃貸により発生した所得のことであり、所得が発生した翌年の4月15日までに、1040NRというフォームを使い所得税の申告をする必要があります。

 これらの申告が必要な所得以外は、非米国関連所得(Non-effectively connected U.S Source Income)とされ、源泉徴収の対象となります。非米国関連所得はこの源泉徴収税により課税が完結するので税務申告をする必要はありません。

 この非米国関連所得とは、米国内の金融機関などから受け取る利息、米国会社からの配当、特許や著作権のライセンス料などが含まれます。この源泉徴収方式には、通常、W-8というフォームを使用して行います。

 また、税務申告に際しては、居住者でも非居住者でもSocial Security Number (S.S.N)が必要ですが、現在SSNは労働ビサを所持している人にしか発行されていませんので、米国歳入庁から納税者番号(Tax ID)を取得する必要があります