日米の居住者に係る外国税額控除

 日本の居住者は、所得の生じた場所が国内であるか、国外であるかを問わず全ての所得について日本で課税されますが、外国で生じた所得について外国の法令で所得税に相当する租税(以下「外国所得税」といいます。)の課税対象とされる場合、日本及び外国の双方で二重に所得税が課税されることになります。
 この国際的な二重課税を調整するために、居住者が外国所得税を納付することとなる場合には、一定の金額(以下「所得税の控除限度額」といいます。)を限度として、その外国所得税の額をその納付することとなる年分の所得税の額から差し引くことができます。これを「居住者に係る外国税額控除」といいます。

 居住者に係る外国税額控除は、米国所得税を納付することとなる日の属する年分において、日本の税法において課されるべき所得税額について、その年分の所得総額に対する調整国外所得金額に対応する部分の金額を限度として居住者に係る外国税額控除を認めるものです。

 しかしながら、国外源泉所得が生じた年とその国外源泉所得に係る外国所得税を納付することとなる年が常に一致するとは限りません。このように、国外源泉所得の発生年と外国所得税の納付年とにずれが生じ得ることを踏まえ、控除対象外国所得税の額と所得税の控除限度額との差額のうち一定額を翌年以降3年間繰り越すことのできる外国税額控除の繰越控除が設けられています。

 これに対して、米国では、外国税額控除(Foreign Tax Credit) は、1年間の繰り戻し(Carry back)と10年間の繰り越し(Carry over)ができます。繰り戻しとは、その年に使えなかった外国での税金(Unused Foreign Tax)をあたかもそれ以前の年に払ったかのように扱うことです。また、使えなかったクレジットは繰り越すこともできます。

 繰り戻しと繰り越しは、最初に繰り戻しを計算し、繰り戻しが可能ならそちらを先に使います。繰り戻しができなかったり、繰り戻ししてもまだ使っていないクレジットが残る場合、それ以降の年に繰り越していきます。

 Foreign Tax Credit の申請には 原則として、Form 1116 の提出が必要です。また、繰り戻しの場合には、過去に遡るのでForm 1040Xによる修正申告(Amended Tax Return)が必要になります。

 このように、外国税額控除は日本では繰越控除しかできないのに対して、米国では繰戻控除が認められており、二重課税の解消の程度が高くなっています。