外国人の帰国時における個人住民税について

 住民税には、所得のある人が一律に負担する均等割とその人の所得金額に応じて負担する所得割とがあります。

 個人の住民税は、住民にとって身近な仕事の費用をそれぞれの負担能力に応じて分担し合うという性格の税金であり、所得税は法人や個人が税金を納めるしくみとなっているのに対し、個人住民税は市区町村が税金を計算して法人や個人に通知をし、税金を徴収するしくみとなっています。

 住民税は、前年中(1月1日~12月31日)の所得について、下記の人を対象にして課税されます。

〇1月1日現在で市区町村に住所を有する人(均等割と所得割)

〇1月1日現在で市区町村に住所を有していないが、市区町村内に事務所、事業所または家屋敷を有する人(均等割)

 このように住民税は、前年の所得に対して翌年に課税されるため、帰国のタイミングによっては、納税方法が異なる場合が生じます。例えば、2020年に米国に帰国した給与所得者の場合には、下記のようにケースごとに2019年度と2020年度の住民税を納付する義務があります。

1.2019年度の住民税

・2019年1月1日に居住している人に課税される。

・2019年6月~2020年5月の給与で会社が特別徴収する。

 ①2020年5月までに帰国

 ・退職時の給与で一括徴収し、会社を通じて納付する、または

 ・普通徴収に切り替えて、本人が納付する。

 ②2020年6月以降に帰国

 ・2020年5月まで会社が特別徴収することにより納付は完了する。

2.2020年度の住民税

・2020年1月1日に居住している人に課税される。

・2020年6月~2021年5月の給与で会社が特別徴収する。

 ①2020年5月までに帰国

 ・会社で特別徴収するのは、2020年6月以降であるため、本人が納付する。

 ②2020年6月以降に帰国

 ・退職時の給与で一括徴収し、会社を通じて納付する、または

 ・普通徴収に切り替えて、本人が納付する。

 ここで、従業員(納税義務者)が転勤、退職、休職、死亡等により、給与の支払を受けなくなった場合は、特別徴収ができなくなった旨を、給与支払者(特別徴収義務者)から「給与所得者異動届出書」の提出により届け出る必要がありますが、この届出書に記載された住所先に住民税の納付書が送達されることになります。

 納税義務者が出国により納税等ができなくなる場合は、「納税管理人申告書兼承認申請書」により、納税管理人の届け出が求められ、納税管理人とは、納税義務者から納税に関する手続き(書類の受け取り、納税、還付金の受領など)を委託された人をいい、法人等の事業所を指定することもできます。 

 なお、本人の住民税を会社が負担した場合、本人の所得とみなされ、20.42%の税率で源泉徴収義務が発生することにも留意が必要です。