公益法人に個人が寄付をする場合には、生前の寄附、遺言による寄附、相続財産の寄附がありますが、その個人に対する税金については、以下の取り扱いがされています。
1.公益法人等に財産を寄附(贈与又は遺贈等)した場合
個人が、土地、建物などの財産(事業所得の基因となるものを除きます。)を法人に寄附した場合には、これらの財産は寄附時の時価により譲渡があったものとみなされ、これらの財産の取得時から寄附時までの値上がり益に対して所得税が課税されます(所得税法59条①一)。これは、個人から法人に土地、建物などの財産が無償で移転するときに、個人に帰属する値上がり益に対する所得税を精算するための制度的要請によるものです。
ただし、土地、建物などの財産を公益法人等に寄附した場合に、その寄附が教育又は科学の振興、文化の向上、社会福祉への貢献その他公益の増進に著しく寄与することなど一定の要件を満たすものとして国税庁長官の承認を受けたときは、この所得税について非課税とする制度(譲渡所得等の非課税の特例)が設けられています(租税特別措置法40条①)。
「寄附」とは、法人に対する贈与又は遺贈のほか、法人を設立するための財産の提供を
いいます。
この特例の対象となる「公益法人等」とは、公益社団法人、公益財団法人、特定一般法
人(一般社団法人及び一般財団法人のうち法人税法に掲げる一定の要件を満たすものをい
います。)及びその他の公益を目的とする事業を行う法人(例えば、社会福祉法人、学校法
人、宗教法人や特定非営利活動法人など)をいいます。
上記の非課税の承認を受けようとする者は、寄附のあった日から4か月以内(その期間が経過する日前に、その寄附があった日の属する年分の所得税の確定申告書の提出期限が到来する場合には、その提出期限まで)に、一定の申請書を納税地の所轄税務署長を経由して、国税庁長官に提出しなければなりません。
2.相続財産を公益法人等に寄附した場合
相続や遺贈によって取得した財産を国、地方公共団体、公益を目的とする事業を行う特定の法人又は認定非営利活動法人(認定NPO法人)に寄附した場合は、その寄附をした財産や支出した金銭は相続税の対象としない特例(国、地方公共団体又は公益を目的とする事業を行う特定の法人に寄附した場合の特例)があります。
この特例を受けるには、次の要件すべてに当てはまることが必要です。
(1)寄附した財産は、相続や遺贈によって取得した財産であること。
相続や遺贈で取得したとみなされる生命保険金や退職手当金も含まれます。
(2)相続財産を相続税の申告書の提出期限までに寄附すること。
(3)寄附した先が国、地方公共団体、教育や科学の振興などに貢献することが著しいと認められる公益を目的とする事業を行う特定の法人(以下「特定の公益法人」といいます。)又は認定非営利活動法人(認定NPO法人)であること。
3.公益法人等に寄附金を支出した場合
公益社団法人・公益財団法人は、全て特定公益増進法人となり、寄附金優遇措置の対象となります(所得税法78条②三、所得税法施行令217条三)。
(1)寄附金控除(所得控除)
個人が、国や地方公共団体、特定公益増進法人等に対し寄附金を支出したときは、それらの寄附金の額の合計額(所得金額の 40%が上限)から 2,000 円を控除した金額が寄附金控除として所得から控除されることとなります(所得税法78条①)。
(2)公益社団法人等寄附金特別控除(税額控除)
個人が、運営組織及び事業活動が適正であること並びに市民から支援を受けていることにつき一定の要件を満たす公益社団法人・公益財団法人等に対し寄附金を支出したときは、(1)との選択により、それらの寄附金の額の合計額(原則として所得金額の40%が上限)から2,000円を控除した金額の40%相当額(その年分の所得税額の25%が上限)が公益社団法人等寄附金特別控除としてその年分の所得税額から控除されることとなります(租税特別措置法41条の18の3①)。