相続税は、死亡した人(被相続人)の財産を相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)により取得した配偶者や子など(相続人等)に対して、その取得した財産の価額を基に課される租税です。
相続税法では、他の税目に見られない特徴があり、相続又は遺贈により財産を取得した者が納付する相続税額を計算するためには、次のように4つの段階の計算が必要です。
1.第1段階(課税価格の計算)
相続又は遺贈により財産を取得した者に係る課税価格(各人の課税価格)を個々に計算し、その後、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者の相続税の課税価格の合計額を計算します。
2.第2段階 (相続税の総額の計算)
課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した残額(課税遺産総額)を基に相続税の総額を計算します。
3.第3段階(各人の算出税額の計算)
相続税の総額を各人が取得した財産の額(割合)に応じて配分し、各人の算出税額を計算します。
4.第4段階(各人の納付税額の計算)
各人の算出税額から各人に応じた各種の税額控除額を控除し、各人の納付すべき税額を計算します。
ここで、相続税の税額控除として、在外財産に対する相続税額の控除(外国税額控除)があります(相続税法20の2条)。
同条は、在外財産に対する相続税額の控除について、「相続又は遺贈によりこの法律の施行地外にある財産を取得した場合において、当該財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは、当該財産を取得した者については、遺産に係る基礎控除から相次相続控除(15条から20条の2)までの規定により算出した金額からその課せられた税額に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。ただし、その控除すべき金額が、その者についてこれらの規定により算出した金額に当該財産の価額が当該相続又は遺贈により取得した財産の価額のうち課税価格計算の基礎に算入された部分のうちに占める割合を乗じて算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額については、当該控除をしない。」と規定しています。
これは、いわゆる国際二重課税の緩和規定であり、外国税額控除の適用を受けることができる者は、次の要件に該当する者です。
(1)相続又は遺贈(相続開始の年にその相続に係る被相続人から受けた贈与を含む。)により財産を取得したこと
(2)取得した財産は、法施行地外に所在するものであること
(3)取得した財産について、その財産の所在地国において相続税に相当する税が課税されたこと
また、外国税額控除による控除額は、次の(1)または(2)のいずれか少ない金額となります。
(1)財産の所在地国で課せられた税額
(2)相続税額×分母のうち国外財産の価額÷相続税の課税価格計算の基礎に算入された財産の価額
相続税の税額控除等は、贈与税額控除、配偶者に対する相続税額の軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、在外財産に対する相続税額の控除の順序で行われ、先順位の税額控除をして、相続税額が零となる場合又は当該税額控除の金額が控除しきれない場合は、後順位の税額控除をすることなく、その者の納付すべき相続税額はないものとなります(同法基本通達20の2-4)。