吸収合併の会社法手続及び届出について

1.合併の概要

 合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に合体することをいいます。会社法上、合併は吸収合併と新設合併に分けられます。吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます(会社法2条27号)。新設合併とは、2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいいます(同条28号)。

 合併による解散は、消滅会社が解散とともに清算手続を経ないで直ちに消滅する点で、会社が事業活動を停止し、会社を清算する場合の原則的な清算手続による解散の場合と異なります。実務上は、新設合併の場合、事業について主務官庁の免許・許可の再取得や再度の株式の上場手続が必要となるため、対等合併であっても吸収合併の方法を選択することが多くなっています。

2.吸収合併の手続

(1)会社は、他の会社と合併をすることができますが、合併をする会社は、合併契約を締結しなければなりません(748条)。

(2)合併をする会社は、合併契約に関する書面等を備え置き、株主及び会社債権者の閲覧等に供しなければなりません(782条(会社規則182条)、794条(会社規則191条))。

(3)合併をする会社は、株主総会の特別決議による承認を受けなければなりません(会社法783条1項、309条3項2号)。

① 存続会社が特別支配会社である場合(468条1項かっこ書、会社規則136条)には、株主総会の決議は不要です(会社法784条1項本文)。

② 消滅会社が特別支配会社である場合(468条1項かっこ書、会社規則136条)には、株主総会の決議は不要です(会社法796条1項本文)。

 ただし、消滅会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続会社の譲渡制限株式である場合であって、存続会社が公開会社でない場合には、株主総会の決議を省略できません(同項ただし書)。 

 また、存続会社において、承継させる資産の額(簿価)が、分割会社の純資産額(会社規則187条)の5分の1以下(定款で厳格化することができます)の場合には、差損が生じる場合(796条2項ただし書、795条2項)を除いて、株主総会の決議が不要になります(会社法784条2項)。

(4)株式会社は、会社債権者異議手続の対象となる債権者がいる場合には、一定事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催促しなければなりません(789条2項、799条2項)。

(5)会社債権者異議手続が終了していないとき又は吸収合併を中止したときを除き、存続会社は合併契約で定められた合併の効力発生日(749条1項6号)に消滅会社の権利義務を承継します(750条1項、6項)。

(6)存続会社は、合併契約に関する事項を記載した書面等を備え置き、株主及び会社債権者の閲覧等に供しなければなりません(801条、会社規則200条)。

(7)会社が吸収合併をしたときは、その効力が生じた日から二週間以内に、その本店の所在地において、吸収合併により消滅する会社については解散の登記をし、吸収合併により存続する会社については変更の登記をしなければなりません(会社法921条)。

3.届出

 合併当事会社は、以下の届出が必要です。合併により被合併法人は消滅するため、被合併法人の届出書は、合併法人が提出します。

(1)法人等の異動(変更)届出書

 ① 合併法人

   届出書:異動事項「合併(新設・吸収・適格・その他)」に所要事項を記載する。

   提出先:合併法人の所轄税務署、県税事務所、市役所

 ② 被合併法人

   届出書:異動事項「解散」に合併により消滅と記載する。   

   提出先:被合併法人の所轄税務署、県税事務所、市役所 

(2)給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

   提出先:被合併法人の所轄税務署  

(3)給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届

   提出先:被合併法人の異動従業員の1月1日現在の住所地の区役所・市役所   

(4)合併による法人の消滅届出書(被合併法人が消費税課税事業者であった場合)

   提出先 :被合併法人の所轄税務署