棚卸資産の評価損について

 棚卸資産とは、商品、製品その他の資産で棚卸しをすべきもの(有価証券及び短期売買商品を除く。)をいいます(法人税法2条20号)。この棚卸しをすべきものとは、販売のために保有される物品や販売を目的とする製品の製造のために使用される物品をいいます。 

 法人が所有する棚卸資産の時価が帳簿価額を下回った場合に、その棚卸資産の評価替えをしてその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分について棚卸資産の評価損が発生します。会社法及び会社計算規則では、資産の評価は取得原価主義を原則としながら、株主、債権者及び利害関係人の保護を目的とする保守主義の原則から、未実現の損失を積極的に認識させ、企業利益に反映させることとしています。

 これに対して法人税法は、資産の評価換えに基づく課税所得の恣意的調整の防止等を考慮する立場から、あくまで取得原価主義を適用することを原則としており、資産の評価換えによる評価損は、災害による著しい損傷その他特別の事実が生じた場合などを除き、原則として 損金の額に算入しないこととしています(33条1項)。

1.法人税法

(資産の評価損の損金不算入等)

第三十三条 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない

2 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。       

2.法人税法施行令

 法人税法第33条第2項(資産の評価損の損金不算入等)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であって、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。

一 棚卸資産 次に掲げる事実

イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。

ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。〔法人税法基本通達9-1-4〕

ハ イ又はロに準ずる特別の事実〔法人税法基本通達9-1-5〕

3.法人税法基本通達

(棚卸資産の著しい陳腐化の例示)

9-1-4 法人税法施行令第68条第1項第1号ロ(評価損の計上ができる著しい陳腐化)に規定する「当該資産が著しく陳腐化したこと」とは、棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する。

(1) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。

(2) 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。

(棚卸資産について評価損の計上ができる「準ずる特別の事実」の例示)

9-1-5 法人税法施行令第68条第1項第1号ハ(棚卸資産の評価損の計上ができる事実)に規定する「イ又はロに準ずる特別の事実」には、例えば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれる。

(棚卸資産について評価損の計上ができない場合)

9-1-6 棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは、法人税法施行令第68条第1項第1号(棚卸資産の評価損の計上ができる事実)に掲げる事実に該当しないことに留意する。