消費税は、国内において行われる資産の譲渡等及び特定仕入れ並びに保税地域から引き取られる外国貨物を課税の対象としていますが、その取引の中には、消費に負担を求める税としての性格から見て課税の対象とすることになじまないものや、社会政策的な配慮から課税することが適当でないものがあります。このような取引については、非課税取引として消費税を課さないこととされています(6条Ⅰ、Ⅱ)。
そして、非課税取引は、消費全般に広く公平に負担を求めるという消費税の性格上、極めて限定されたものとなっており、土地の譲渡及び貸付けはこれに該当しますが、土地仲介手数料はこれに該当しません(6条Ⅰ、Ⅱ、別表第一及び第二)。
したがって、土地仲介手数料は課税取引となるため、不動産業者にとっては、課税売上であり、手数料を支払う業者にとっては課税仕入となります。
ここで、仕入税額控除の計算方法のうち個別対応方式とは、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の全てを、
① 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの
② 非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの
③ 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの
に区分し、次の算式により計算した仕入控除税額をその課税期間中の課税売上げに係る消費税額から控除する方式です。
(算式)仕入控除税額 = ① + (③ × 課税売上割合)
この方式は上記の区分がされている場合に限り、採用することができます。
なお、課税売上割合に代えて、所轄税務署長の承認を受けた課税売上割合に準ずる割合とすることもできます。
また、一括比例配分方式とは、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額が個別対応方式の①、②及び③のように区分されていない場合又は区分されていてもこの方式を選択する場合に適用します。
その課税期間中の課税売上げに係る消費税額から控除する仕入控除税額は、次の算式によって計算した金額になります。
(算式) 仕入控除税額 = 課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合
なお、この一括比例配分方式を選択した場合には、2年間以上継続して適用した後でなければ、個別対応方式に変更することはできず、課税売上割合に準ずる割合は適用できません。
以上より、土地仲介手数料は不動産業者にとっては、課税売上になり、手数料を支払う業者(買主)にとっては、課税仕入となり、土地の購入は非課税仕入になります。
手数料を支払う業者(売主)にとっては、課税仕入となり、土地の売却は非課税売上となるため、個別対応方式ではその仕入税額は②非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るものとして、控除することができず、一括比例配分方式ではその仕入税額のうち課税売上割合に対応する部分しか控除できないことになります。この場合、土地の譲渡は非課税取引であり、課税売上割合が低下するため、必ずしも一括比例配分方式を選択することが有利になるとは限りません。