所得税は、原則として個人の所得に対して課される税金であり、法人の所得に課される法人税と並んで直接税の代表的な存在です。
直接税とは、税金を負担する者が、直接その税金を納めることを予定して立法化された税であり、間接税とは、消費税や酒税のように税金を負担する者が、税金を納める者と異なることを予定して立法化された税のことをいいます。
所得税は、その所得の性質により担税力に差異があることも考慮して、それぞれの所得が生ずる形態に応じてそれに最も適合した所得金額の計算を行い、その所得に応じた課税を行うために、所得を10種類に分類している点で特徴的な税金です。
所得税法は、納税義務者、課税標準、税率、申告、納付等について5編243条までの条文で以下のように構成されています。
第1編 総則(第1条~第20条)
第2編 居住者の納税義務(第21条~第160条)
第3編 非居住者及び法人の納税義務(第161条~第180条の2)
第4編 源泉徴収(第181条~第223条)
第5編 罰則(第224条~第243条)
所得税に関する法令は、所得税法以外にも、法律の委任により又はこれを実施するために所得税法施行令(政令)、同法施行規則(省令)があり、これらが一体となって所得税法を形成しています。
さらに、所得税法の特例として、政策的な配慮に基づく課税上の特例が租税特別措置法に設けられ、また、これらの法令の解釈や適用に関して、数多くの例規通達が国税庁において定められています。なお、この他に各税法に共通な事項は国税通則法に規定されています。
・所得税法ーーーー所得税法施行令(政令)ー所得税法施行規則(省令)
・租税特別措置法ー租税特別措置法施行令ーー租税特別措置法施行規則
・国税通則法ーーー国税通則法施行令ーーーー国税通則法施行規則
以上の法令のほかに、告示というものがあります。告示とは、各省大臣や外局の長が、その機関の所掌事務について法令の規定に基づいて、必要な事項を決定して、広く一般に知らせるために、公示することをいいます。この告示は、法令の延長という性格を持ち、国の規則の一部とみられることになります。国税関係では、原則として、法令又は政令の規定に基づく告示は財務大臣が行い、省令の規定に基づく告示は国税庁長官が行っています。
法律に限らず、政令、省令、告示は、その制定と施行について、一般国民に公表されなければならないものであり、この公表の形式は、官報で交付するという方法で行われています。
所得税関係の例規通達としては、所得税基本通達、個別通達(申告所得税関係、源泉所得税関係、譲渡・山林所得関係)、租税特別措置法関係通達があり、いずれも公表されています。
例規通達は、法令とは異なった形式で、国税庁長官が下部機関である国税局長に対し、国税局長が税務署長に対して、それぞれあて名を明示して行う命令です。長官通達は、国税局長を通じて税務職員全般に対する命令となります。
例規通達は、法令解釈通達と事務運営指針の二つに分類され、前者は法令の解釈を行うものであり、後者は仕事のやり方を定めるものです。法令解釈通達は、各税法の基本的に重要な事柄を網羅的に定めた基本通達と、その時々の事柄の取扱い、税法改正時における取扱いを個々に定めた個別通達の二つに分かれます。
(参考)国税庁 税大講本「税法入門」「所得税法」