2018年

12月

10日

遺言でできることとできないこと

 遺言は、故人の最終的な意思表示であり相続開始と同時に効力が生じます。遺言による相続分の指定は法定相続分に優先します。ただし、最終的な意思とはいえ、遺言では認められないこともあります。また、法定相続に優先する効力を認め、その効力が発生するときには遺言を残した人が亡くなられているため、故人の意思であることを明確にする厳格な方式が定められています。

 

1.遺言でできること

 遺言でできることは、主に相続人に関すること、相続分に関すること、遺産分割に関すること等です。ただし、法定相続人全員が合意し、遺産分割協議をし直せば、遺言に従わなくてもかまいません。

 ① 相続分の指定

 ② 遺産分割方法の指定・遺産分割の禁止

 ③ 遺贈・信託

 ④ 遺言執行者の指定

 ⑤ 相続人廃除の意思表示・相続人廃除の取消の意思表示

 ⑥ 認知・後見人の指定

 2.遺言でできないこと

 ① 相続人の指定

 ② 結婚・離婚(双方の合意が必要であるため)

 ③ 養子縁組・養子縁組の解消

 ④ 遺体解剖・臓器移植

 

 一般的な遺言は、公正証書遺言・自筆証書遺言・秘密証書遺言の3種類です。公正証書遺言以外は、遺言者が作成するため、内容が不明確なものや書式が不備で遺言として認められない場合もあります。

 遺言を作成するときは、公正証書遺言が間違いがありません。公証役場で、公証人が作成するため、書式違反や内容が不明で無効になることがなく、自筆証書遺言や秘密証書遺言のように家庭裁判所の検認手続きを受ける必要がありません。

 遺言書を発見した者、保存を依頼された者は、相続開始を知ったら遺言書を開封しないで家庭裁判所に提出します。家庭裁判所は、相続人やその代理人立会いの下に開封し、遺言書の方式や内容を調査し検認調書を作成します。遺言書の保存を確実にし、改変を防止するためです。

 検認手続きを受けずに遺言書を開封しても、遺言が無効になるわけではありませんが、トラブルを避けるためにも必ず検認手続きを受けることをおすすめします。また、検認手続きを受けていない遺言書で不動産等の名義変更をすることはできません。

2018年

11月

10日

不動産登記の概要について

 不動産登記制度とは、不動産登記法第1条にあるように不動産の表題及び不動産に関する権利を公示するための登記に関する制度のことであり、この制度により、国民の権利の保全を図り、取引の安全と円滑に資することを目的としています。

 不動産に関する登記は、不動産の表示に関する登記と不動産の権利(所有権、地上権、永小作権、地役権、先取特権、質権、抵当権、賃借権及び採石権の9種の権利)に関する登記の2種に大別されます(不動産登記法第3条)。

 この両者の登記は、それぞれ別個独立にされるものであり、前者の不動産の表題に関する登記は、不動産の権利の客体とされる土地及び建物の状況を明確にするための登記として、また、後者の不動産の権利に関する登記は、その権利を第三者に対抗(民法第177条)するための登記としてされるものです。

 登記所において保管する不動産の状況等を公示する公証資料には、土地及び建物の登記事項証明書をはじめ、地図(地図に準ずる図面)、建物所在図、各種図面、閉鎖登記簿、その他の各種諸帳簿等があり、それぞれ分担する役割の下に、不動産の同一性の識別とその状況等を広く提供しています。

 登記記録は、不動産の同一性の識別とその状況及び不動産に関する権利の内容を明らかにする公証資料であり、不動産に関する登記記録は、1筆の土地又は1個の建物ごとに作成されるものです。

 不動産登記法第14条は、「登記所には、地図及び建物所在図を備え付けるものとする」としており、土地登記記録では、その表題部により土地一筆ごとの地番・地目・地積が明らかにされています。しかしながら、それらの情報だけでは、実際にその土地がどこに位置し、どういう形状をしているかということは判断できません。そこで、登記所に地図を備えることによりそのことを明らかにしようとしています。

2018年

10月

10日

不動産鑑定士について

 税理士や弁護士と比較して不動産鑑定士についてよく知っている人はあまりいないのではないでしょうか。

 不動産鑑定士は、地域の環境や社会情勢など諸条件を考慮して適正な地価等を判断する唯一の資格者であり、また豊富な実務経験と知識を活かして、取引事例の調査・分析及び物件調査· 市場価格などの隣接業務のほか、団体や個人を対象に不動産の利用に関するコンサルティングなどの周辺業務も行っています。

 定期的な鑑定評価のひとつとして、国や都道府県が行う「地価公示」や「都道府県地価調査」「相続税標準地・固定資産税標準宅地の評価」があります。そのほかにも公共用地の取得や裁判上の評価、(不動産を証券化する際の)資産評価なども行っています。
 不動産の取引価格水準や地代家賃等水準の把握、または不動産売買及び担保価値の把握のための調査・分析のほか、不動産投資や処分の判断資料となる調査・分析なども行います。
不動産のエキスパートとして広く個人や企業を対象に、不動産の有効活用、開発計画の策定をはじめとする総合的なアドバ イスを行っています。

 具体的には以下のようなケースにおいて不動産鑑定士が活用されています。

1.不動産を賃貸借するとき
 ビルやマンションなどの家賃の決定には、貸手も借手も納得のいく賃料にすることが必要です。このような家賃のほか、地代、 契約更新料、名義書替料なども鑑定評価の対象です。また、借地権、借家権価格と財産価値判定の根拠としても鑑定評価は役立ちます。
2.相続などで適正な価格が必要なとき
 財産相続で一番問題となるのが土地・建物など、不動産の分配です。鑑定評価を受ければ、適正な価格が把握でき、公平な相続財産の分割をすることができます 。
3.不動産を売買・交換するとき
 「思いどおりの値がつけば手放したい」と思っているときなど、まず、所有する不動産の適正な価格を知っておく必要があります。また不動産を買うとき、交換するときにも、鑑定評価をしておけば、安心して取引をすすめられます。
4.不動産を担保にするとき
 所有する不動産を担保に、事業資金などを借りるとき鑑定評価書があれば、借りられる金額の予測がつくなど便利です。逆に担保を設定するときは、評価額がはっきりしていることが重要です。また、不動産を証券化する場合、不動産鑑定評価書が必要となります。
5.資産評価をするとき
 土地・建物の評価替えをするとき、あるいは現在の資産価格を知りたいとき、鑑定評価が必要となります。不動産の価格は流動的なものだけに、常にそのときどきの価格を把握しておくことが大切です。
6.共同ビルの権利調整や再開発関連の場合
 共同ビルの権利調整や再開発関連の場合は、権利関係が複雑で煩雑なものです。複雑なものをスッキリさせ、無用なトラブルを防ぐためにも、客観的で公平な鑑定評価が必要です。

2018年

9月

10日

財産評価(課税価格)について

 相続、遺贈または贈与が発生した場合において、相続税や贈与税を計算するためには取得した財産の価値、つまり課税価格を把握しなければなりません。この課税価格の計算に当たっては、取得した財産をいくらに見積もるかという「財産の評価」が必要になります。

 相続税法では、財産の評価に関しては、地上権、永小作権、定期金に関する権利等の財産についてはその評価方法が規定されていますが、その他の財産については「時価」により評価する(相続税法第22条)旨だけが規定され、「時価」の内容は財産評価基本通達を含んだ法律の解釈に委ねられています。

 ただし、財産評価基本通達は法律ではなく、あくまでも時価の算定方法の指針を示したものにすぎません。したがって、財産評価基本通達は基本的な計算方法である一方、これ以外の評価方法も認められる可能性が高いということがいえます。

 ここで重要なのは、上記の「これ以外の評価方法」とは何かが問題となることでです。これは、不動産であれば、一般的に不動産鑑定評価を指すため、ここに財産評価において税理士が鑑定評価の活用方法を理解しなければならない必然性があります。

 不動産の鑑定評価に関する法律において、不動産鑑定評価とは、「土地若しくは建物又はこれらに関する所有権以外の権利の経済価値を判定し、その結果を価額に表示すること」と規定されています。

 また、不動産鑑定士が準拠すべき不動産鑑定評価の実務指針である不動産鑑定評価基準では、不動産の鑑定評価について、「不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することである」とされ、さらに、「これらが有機的かつ総合的に発揮できる練達堪能な専門家によってなされるとき、初めて合理的であって、客観的に論証できるものとなる」と指摘しています。

 つまり、不動産の鑑定評価は不動産の経済価値を金銭に見積もる行為全般を指し、専門家である不動産鑑定士が行うことによりはじめて財産評価における評価方法として認められるものであるといえます。

2018年

8月

10日

米国申告書作成者番号(PTIN)について

 米国申告書作成者番号(Preparer Tax Identification Numberとは、米国で報酬を得て申告書を作成する者に要求される番号であり、すべての米国税理士(Enrolled agents)はこの番号を取得する必要があります。

 米国申告書作成者番号を取得するにあたっては、以下の情報が必要になります。

・社会保障番号(Social Security Number

・個人情報(名前、メールアドレス、誕生日)

・勤務先情報(名称、メールアドレス、電話番号)

・前年の所得税申告書(名前、住所、申告ステイタス)

・犯罪歴(あれば)

・所得税や法人税の滞納(あれば)

・適用される米国専門家情報(登録番号や所属、有効期間を含む公認会計士、弁護士、税理士、登録退職年金プラン、登録保険数理士、登録受入代理人州ライセンスの情報)

 また、米国で報酬を得て申告書を作成する者は、翌年申告書を作成する前に米国申告書作成者番号を更新する必要があり、米国税理士も同様です。更新に際しては、米国内国歳入庁(Internal Revenue Service)からメール通知がされますので、オンラインにより手続きを行うことが可能です。更新手続きは以下の3つのステップがあります。

1.アカウントにアクセスする

 既に登録済みのアカウントにアクセスします。

2.登録情報を更新する

・個人情報(名前、メールアドレス)

・勤務先情報(名称、メールアドレス)

・犯罪歴(あれば)

・所得税や法人税の滞納(あれば)

・適用される米国専門家情報(登録番号や所属、有効期間を含む公認会計士、弁護士、税理士、登録退職年金プラン、登録保険数理士、登録受入代理人州ライセンスの情報)

3.米国申告書作成者番号の更新確定

 これまでの内容に間違いがなければオンラインで更新の確定を行います。更新が確定されればその確定が通知されます。

 このように米国申告書作成者番号をオンラインで更新する場合には通常15分もあれば完了し、更新料は無料です。更新は紙によることも可能ですが、Form W-12を提出する必要があり、更新には4~6週間かかります。

2018年

7月

10日

米国の修正申告(Amended Return)について

 米国では、確定申告書を提出した後に誤りを発見した場合には、修正申告書(Amending Tax Return)を提出することによって訂正を行うことができます。

 米国内国歳入庁(Internal Revenue Service)に対して修正申告書を提出するにあたっては、以下の10つの点に注意してください。

1.修正申告が求められるとき

 申請ステイタス、扶養家族数、所得総額、所得控除または税額控除を訂正する必要がある場合は、修正申告書を提出する必要があります。 米国個人所得税修正申告書(Form 1040X)には、修正する理由を記載する欄があります。

2.修正申告をしないとき

 確定申告書の修正をしないときには、場合によっては、確定申告書を修正する必要はありません。例えば米国内国歳入庁は通常、確定申告書をチェックして計算ミスを訂正します。もし必要な本表(Form)や別表(Schedule)が提出されていない場合、米国内国歳入庁から何が足りないかについて連絡が入ることになります。

3.修正申告をするとき

 Form 1040Xを使用して、以前に提出したForm 1040、1040A、1040EZ、1040NRまたは1040NR-EZを修正します。 この場合、Form 1040X修正する課税年度にチェックを入れます。修正申告書は電子申告することはできず、用紙に記入して提出する必要があります。

4.複数年にわたる修正をするとき

 修正申告書を複数年にわたって提出する場合は、1年ごとにForm 1040Xを別途用意してそれぞれ適切な米国内国歳入庁の処理センターに別の封筒で郵送してください。提出先は米国内国歳入庁の処理手順書に記載されています。

5.Form 1040Xについて

 Form 1040Xには3つの記入欄があります。 A欄は元の確定申告書の数値を示します。 B欄には修正内容(A欄とB欄の差額)が表示されます。 C欄は修正後の数値が示されます。また、修正内容と修正理由を説明する記入欄もあります。

6.その他の本表や別表(Forms or Schedules

 変更内容に他の別表や本表が含まれている場合には、Form 1040Xに添付してください。 これをしないと、処理が遅れることになります。

7.他の還付のための修正申告

 他の還付のための修正申告をしている場合には、その還付金を受け取った後でなければ修正申告書を提出してはいけません。

8.過少申告のための修正申告

 過少申告のため修正申告書を提出する場合には、利子税や加算税がかかるため、できるだけ早くForm 1040Xを提出して、税金を支払う必要があります。

9.修正申告ができる期間

 還付を請求するには、通常、元の確定申告書を提出した日から、または税金を支払った日から2年以内のいずれか遅い日から3年以内に、Form 1040Xを提出する必要があります。
10.処理日数
 修正申告書の通常の処理には、8〜12週間かかります。

 これに対して日本では、確定申告書の訂正についてケースごとに2つの手続きが存在します。納める税金が多すぎた場合や還付される税金が少なすぎた場合には、「更正の請求」を行います。更正の請求ができる期間は、原則として法定申告期限から5年以内です。また、納める税金が少なすぎた場合や還付される税金が多すぎた場合には、「修正申告」を行います。

2018年

6月

10日

米国の損益通算ルールについて

 米国には、税務上申告する年度に発生した他の所得と損益通算できる損失制限について①受動的活動のルール(Passive Activity Rules)と②危険負担のルール(At-Risk Rules)の2つのルールが存在します。

 ①受動的活動のルールは、納税者が実質的に参加していない(not materially participate)事業活動に適用されます。この場合における納税者は、単に投資から得られるリターンのみを期待している投資家のことをいいます。納税者が実質的に参加していない事業活動は税務上受動的活動とされ、賃貸活動は、不動産業者でない限り受動的活動とみなされます。このルールは、個人(individual)および閉鎖会社(closely held corporation)、人的役務提供法人(personal service corporation)に適用されます。

 ここで、閉鎖会社とは個人的所有会社のことであり、5人以下の株主で株式の50%超を保有している小規模な法人のことをいいます。また、人的役務提供法人とは、従業員株主が人的役務(医療、法務、技術、設計、会計、保険数理、芸術、コンサルティング)を提供する法人のことをいいます。

 受動的活動のルールは、受動的活動以外の所得と受動的活動の損失の相殺を制限するルールであり、換言すれば受動的活動の損失は受動的活動の所得としか相殺できません。他の受動的活動の所得と相殺できなかった損失は、翌年度以降に繰り越すことは可能です。

 ここで、受動的活動以外の所得とは、給与所得といった能動的所得(active income)や利子所得、配当所得、ロイヤルティ所得といった投資関連所得(portfolio income)のことを指します。このように米国では税務上、所得は投資関連所得、能動的所得、受動的所得の3区分に分類されています。

 ②危険負担のルールは、事業や投資活動から生じた損失の控除は、負担されたリスクの金額までしか控除できないというルールのことです。このルールは、個人および閉鎖会社に適用されます。

 例えば、米国には通常のC法人(C-corporation)と小規模なS法人(S-corporation)がありますが、S法人に100万円の投資をして、唯一の株主兼従業員である場合において、200万円の損失を被った場合であっても、その損失は他の所得と100万円までしか損益通算することはできません。ただし、損益通算できなかった損失は将来に繰り越すことは可能です。

 危険負担のルールは、事業活動における納税者の投資(investment)に関するものである一方、受動的活動のルールは事業活動における納税者の参加(participation)に関するものであり、相互に関連していますが、受動的活動のルールを適用する前に危険負担のルールを適用するという関係にあります。

2018年

5月

10日

US CPAライセンス・ホルダーのサインについて

 米国公認会計士(US CPA)全科目合格後にワシントン州公認会計士(US CPA in Washington State)や他州公認会計士のライセンス申請を行う場合、米国公認会計士ライセンス・ホルダー(US CPA Lisence Holder)の実務経験証明のサイン取得が必要になります。予備校のライセンス・サポートがある場合や監査法人に勤務して身近にライセンス・ホルダーがいる場合には問題はありませんが、そうでない場合には、全米州政府会計委員会(NASBA)の経験認証サービス(Experience Verification Service)があります。

 全米州政府会計委員会は、世界中の国内外の会計専門家が米国公認会計士資格情報を利用できるようにすることを目標にしており、多くのライセンス申請者は、ライセンス・ホルダーを見つけるのが難しいことから、このサービスは開始されました。

 全米州政府会計委員会の経験認証サービスは、ライセンス・ホルダーのインタビューにより、ライセンス申請者の実務経験の認証を行い、米国内外のライセンス申請者のニーズに対応する取り組みですが、比較的最近に開始されたサービスです。サインをしてくれる米国公認会計士を探す必要もないことや、全米州政府会計委員会のサービスですから、ライセンス申請後にOKが出るどうか心配する必要もありません。

 このサービスを開始するには、ライセンス申請者は次の条件を満たす必要があります。
①米国公認会計士
試験に全科目合格(
Passed the CPA Examination

②一定の学歴要件(Met the Board’s educational requirements for licensure

1〜2年の会計実務経験(1-2 years of accounting experience

 現在利用できる州は、グアム、ケンタッキー、ミシガン、ミネソタ、モンタナ、ニューハンプシャー、オクラホマ、ヴァージニア、ワシントン、ワシントンD.C.、ウィスコンシンですが、これらの州以外で合格した場合には、合格実績を上記の州へ移すために移管(Transfer)の申請を行う必要があります。

 日本人がサービスを利用するには700ドルかかります。サービスの流れは以下のとおりです。
 ①オンラインによる利用申請

 ②
現地のプロバイダーによる職務経験の確認
 ③ライセンス・ホルダー
の英語での電話またはスカイプインタビュー
 ④
総合的な最終報告書の作成

 その後は、この最終報告書と必要書類を州にオンラインで提出すれば、ライセンス登録されます。ライセンス登録者は、全米統一ライセンスサーチ(CPA Verify)に掲載され、名前もしくはライセンス番号を入力すると、ライセンス保持者かどうかの検索が可能になります。

 全米州政府会計委員会による認証を受けているため、ライセンス登録自体はすぐ行われますが、認証サービスはきちんとした手続きを踏んでおり、1カ月程度を要します。

2018年

4月

10日

日米の税金の支払い方法について

 国税は、申告した税額等に基づき納税者自身で納付の期限(納期限)までに納付する必要があります。米国も日本と同様、原則として税金の支払期日は申告期限と同じです。

 米国の税金の支払い方法は以下のとおりです。

1.銀行口座からの直接支払い(Direct Pay With Bank Account

 銀行口座からの直接支払いは、個人用として利用されています。

2.デビットカードまたはクレジットカード(Debit or Credit Card

 デビットカードまたはクレジットカードによる支払いは、金額に応じて手数料が設定されています。

3.電子連邦税金支払システム(The Electronic Federal Tax Payment System

 電子連邦税金支払いシステムは、米国内国歳入庁(Internal Revenue Service)に登録が必要になりますが、事業者や多額の支払い用に利用されています。

4.電子ファンド引き落とし(Electronic Funds Withdrawal

 電子ファンド引き落としとは、税務ソフトで電子申告を行うときにオプションとして設定されている方法です。引き落としは直接デビットか自分の銀行口座から行います。

5.米国銀行口座連邦税金支払い(Same-Day Wire Federal Tax Payments

 米国銀行口座連邦税金支払いとは、米国国内にある銀行口座からの引き落としを行う方法です。日本国内の銀行口座を使用することはできません。

6.小切手またはマネーオーダー(Check or Money Order

 小切手やマネーオーダーによる支払いは、日本国内から納付する場合は、利便性が高いため、利用頻度が高い方法です。小切手を使用する場合は、事前に米国に口座を作っておく必要があります。小切手やマネーオーダーを申告書と同封して、米国内国歳入庁に郵送することになりますが、米国では日本とは異なり、郵便事故も想定されるため、EMSで送達確認を行うことが推奨されます。

7.現金(Cash

 現金で米国内国歳入庁の事務所や契約された米国国内のコンビニで支払う方法です。日本国内のコンビニで支払うことはできません。 

 これに対して日本の税金の支払い方法は以下のとおりです。

1.ダイレクト納付(e-Taxによる簡単な操作で預貯金口座からの振替により納付する方法)

2.インターネットバンキング(インターネットバンキングから納付する方法)

3.クレジットカード納付(国税クレジットカードお支払サイトを運営する民間業者に納付を委託する方法)

4.コンビニ納付(コンビニエンスストアの窓口で納付する方法)

5.振替納税(預貯金口座からの振替により納付する方法)

6.窓口納付(金融機関又は所轄の税務署の窓口で納付する方法)

2018年

3月

10日

米国の純投資所得税(Net Investment Income Tax)

 米国では、一定額以上の純投資所得がある場合、純投資所得税(Net Investment Income Tax)が課せられます。税率は3.8%であり、修正後総所得(modified adjusted gross income)が単身者であれば、200,000ドルまで、夫婦合算申告の場合には250,000ドルまでであれば税金はかかりません。
  一般的に純投資所得には、以下のものが含まれます。

・利息(Interest

・配当(Dividends

・資産売却益(Capital Gains

・賃貸・ロイヤルティ収入(Rental and royalty income
・不適格年金(Non-qualified annuities)

が含まれます。

 この中には、給与や自営業による収入は含まれません。また、失業手当や社会保障給付、離婚手当、居住用財産の特別控除額も含まれません。

 ただし、米国市民や米国居住者であれば、純投資所得税はかかりますが、米国非居住者であれば適用されないことになります。

 なお、申告には連邦所得税の申告時にForm 8960の提出が求められます。

 このように、米国では一定額以上の給与所得者や自営業者に対して、老齢医療保険税(Additional Medicare Tax)が課せられているのと同様に、純投資所得に対しても純投資所得税が課せられており、一定額以上の所得がある富裕層に対しての課税が強化されています。

2018年

2月

10日

米国公認会計士(US CPA)の登録について

 米国公認会計士試験は、FARAUDREGBECの4科目からなっており、これに全科目合格すると、いわゆる全科目合格者(Successful Candidate)となり、一般的に「米国公認会計士に合格した」というのはこの段階のことを指します。

 この時点では全科目合格者であって、資格を持っているわけではないため、資格として米国公認会計士を活用するためには、この時点から次の段階に進む必要があります。

 全科目合格の次に取得するのが、資格証明書(Certificate)です。基本的に、資格証明書と免許(License)は同時進行で取得することが多いのですが、そうでない場合もあります。

 米国は連邦制の国家であり、登録はそれぞれの州に対して行います。州によっては次の段階である免許を取得する前に、この資格証明書を取得することができることもあります。

 例えば、グアム州(Guam State)には、非活動(Inactive)というステイタスがあり、これは、米国公認会計士としての資格は証明されているが、活動はしていないという状態を指します。ただ、免許登録後に、活動を休止し、非活動のステイタスを選択するという方法もあります。このステイタスは米国公認会計士だけでなく、米国税理士(US EA)にも存在します。

 さらに、免許を取得するには、州に免許登録を行う必要がありますが、通常は、資格証明書とともに免許を付与するという州がほとんどです。免許登録するには、一定の要件を通過する必要がありますが、州によっては比較的簡単な要件しか課していないところもあります。

 例えば、免許登録の要件のひとつに「米国での監査経験」を要求している州が多いのですが、ワシントン州(Washington State)は、米国以外の経理やコンサルティングなどの経験でも免許を申請することができ、一般企業の日本人は通常監査経験を積むことができないため、ワシントン州で免許登録を行うことが一般的な流れです。

 通常の手順としては、以下のような流れとなります。

①ワシントン州に対しての学歴審査依頼
②合格実績のTransfer依頼(他州の合格実績をワシントン州へ移転)

AICPA Ethics Exam取り寄せ・答案提出
④ワシントン州指定の倫理試験(Ethics Exam回答

⑤ワシントン州へ免許申請
 また、申請の際には、5年間活動中(Active)の社外の米国公認会計士のサインが必要となります。他州では直属の上司のサインが求められることもあります。

 なお、米国公認会計士試験に合格してから4 年以上経過後の免許申請の場合は、申請直近3年間でワシントン州の要求する継続教育(CPE)を行ったことを証明しなければなりません。

 ワシントン州では申請者に対して、一定の割合でサンプルし、申請内容に虚偽がないか等を調査しており(ライセンス監査)、ライセンス監査の対象者になった場合は、追加資料の提出が必要になる場合もあります。

2018年

1月

10日

米国税理士(US EA)の更新について

 米国税理士(EA)の登録には実務経験は不要ですが、登録後、3年毎の更新が義務付けられており、更新時にはForm 8554を提出しなければなりません。

 Form 8554の提出は、郵送による方法と、Pay.govによりクレジットカードやデビットカードを使用して電子申告をする方法とがあります。

 米国税理士の更新に際しては、申告書作成者番号(PTIN)を更新しておくことが前提となり、3年間で72時間(最低年間16時間)の継続教育(CPE)を受講するとともに、毎年2時間の倫理教育が必要になります。

 活動ステイタス(Active Enrolled Agent status)ではなく、非活動ステイタス(Inactive Enrolled Agent status)を選択することもできますが、米国で報酬を得て申告書を作成することはできず、更新にかかる費用はステイタスにかかわらず67ドルかかります。

 単位の取得の方法には、

①開催されているセミナーに参加する。
②米国・内国歳入庁(IRS)より認められた通信教育により単位を取得する。
といった方法がありますが、主に利用されているのが通信教育です。通信教育にはIRSが指定した業者(IRS-Approved Continuing Education Providers)を利用します。

 実務で一番使用するのは、米国税法の手引書(Publication)です。この手引書に沿って書類を作り、段取りを組まないといけません。指定された業者は様々で、金額や教育内容が異なるため、米国税法の手引書を利用できる教育かどうかは業者選択のポイントの一つになります。

 日本では、会社が年末調整で年間の総税額を見直し源泉徴収で調整を行うため、ほとんどの給与所得者は自分で確定申告をする必要がありません。これに対して米国では、給与所得者、自家営業者、投資所得のあった人など、収入のあった人は原則としてすべて確定申告書を作成して連邦IRSと州の税務当局の両方に毎年申告期日までに提出しなければなりません。

 源泉課税を基本とする日本の税制とは異なり、米国では給与所得以外の利子、配当、不動産賃貸等の所得も損益通算し確定申告する総合課税方式を採用しています。この方式は、申告する側にとっても、また、その処理を行う連邦及び州政府にとっても時間を要する複雑な手続きですが、納税者が投資内容の選択により税額を操作できるという柔軟性も持ち合わせています。

 このように米国税務は、日本税務以上に複雑なものであるため、専門家に対する継続教育の必要性もまた日本と同様に不可欠のものとなっています。なお、日本の税理士には、更新制度はありませんが、継続教育の制度(罰則なし)は存在します。