2021年

12月

10日

不動産鑑定評価に基づく相続税の申告について

 財産の評価については、その財産の取得価額による原価主義と、その課税時期における時価による時価主義の二つの方法が考えられますが、相続税法では、時価主義を基本原則としています(22条)。

 これは、相続税や贈与税のような財産課税にあっては、相続や贈与などにより取得した財産を、その取得時の時価により評価することが、納税者の側からみて最も共通的な判断基準として受け入れることができるし、評価基準としても最も一般性、普遍性を持つ尺度として考えられることによるものです。 

 同条は、相続により取得した財産の価額につき、特別の定めがあるものを除き、当該財産の取得の時における時価によるべき旨を定めているところ、ここにいう時価とは、当該財産の客観的な交換価値をいうものと解され、課税実務上は、「財産評価基本通達」(評価通達)に基づいて評価することとされています。 

 では、土地を相続した納税者が評価通達の定める評価方法よりも価額が低い不動産鑑定評価(鑑定評価)により相続税の申告をすることはできないのでしょうか。時価評価における評価通達と鑑定評価の位置付けが問題となります。

 まず、相続税法は、財産の評価方法を評価通達に委任する旨の規定はなく、財産の価額は、原則として当該財産の取得の時における「時価」によらなければなりません(同条)。

 そして、不動産の鑑定評価は、その対象である不動産の経済価値を判定し、これを貨幣額をもって表示することです。この鑑定評価額は、財産の取得における客観的な交換価値として「時価」を表示しているといえ、その評価額で申告することは可能であるように思えます。

 しかし、相続財産の客観的な交換価値(時価)を画一的な評価方式によることなく個別事案ごとに評価することにすると、その評価方式、基礎資料の選択の仕方等により異なった金額が相続財産の「時価」として導かれる結果が生ずることを避け難く、また、課税庁の事務負担が過重なものとなり、課税事務の効率的な処理が困難となるおそれもあることから、相続財産の価額をあらかじめ定められた評価方式によって画一的に評価することは合理的なものであると考えられます。

 さらに、同通達の定める評価方式が形式的に全ての納税者に係る相続財産の価額の評価において用いられることによって、基本的には租税負担の実質的な公平を実現することができるものと解され、同条の規定もいわゆる租税法の基本原則の 1 つである租税平等主義を当然の前提としているものと考えられることに鑑みれば、特段の事情があるときを除き、特定の納税者あるいは特定の相続財産についてのみ同通達の定める評価方式以外の評価方式によってその価額を評価することは、たとえその評価方式によって算定された金額がそれ自体では同条の定める時価として許容範囲内にあるといい得るものであったとしても、租税平等主義に反するものとして許されないものというべきです。

 したがって、その不動産に適用される評価通達の定める評価方法が客観的な交換価値を算定する方法として一般的な合理性を有しないこと又はその評価方法によっては客観的な交換価値を適切に算定することができない特段の事情がない限り、通達評価額よりも価格が低い鑑定評価額が存在することのみをもって、鑑定評価額に基づく相続税の申告をすることはできないことになります。

2021年

11月

10日

土地仲介手数料の消費税の取り扱いについて

 消費税は、国内において行われる資産の譲渡等及び特定仕入れ並びに保税地域から引き取られる外国貨物を課税の対象としていますが、その取引の中には、消費に負担を求める税としての性格から見て課税の対象とすることになじまないものや、社会政策的な配慮から課税することが適当でないものがあります。このような取引については、非課税取引として消費税を課さないこととされています(6条Ⅰ、Ⅱ)。 

 そして、非課税取引は、消費全般に広く公平に負担を求めるという消費税の性格上、極めて限定されたものとなっており、土地の譲渡及び貸付けはこれに該当しますが、土地仲介手数料はこれに該当しません(6条Ⅰ、Ⅱ、別表第一及び第二)。 

 したがって、土地仲介手数料は課税取引となるため、不動産業者にとっては、課税売上であり、手数料を支払う業者にとっては課税仕入となります。

 ここで、仕入税額控除の計算方法のうち個別対応方式とは、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額の全てを、

① 課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの

非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るもの

③ 課税売上げと非課税売上げに共通して要する課税仕入れ等に係るもの

 に区分し、次の算式により計算した仕入控除税額をその課税期間中の課税売上げに係る消費税額から控除する方式です。

(算式)仕入控除税額 = ① + (③ × 課税売上割合)

 この方式は上記の区分がされている場合に限り、採用することができます。

 なお、課税売上割合に代えて、所轄税務署長の承認を受けた課税売上割合に準ずる割合とすることもできます。

 また、一括比例配分方式とは、その課税期間中の課税仕入れ等に係る消費税額が個別対応方式の①、②及び③のように区分されていない場合又は区分されていてもこの方式を選択する場合に適用します。

 その課税期間中の課税売上げに係る消費税額から控除する仕入控除税額は、次の算式によって計算した金額になります。

(算式) 仕入控除税額 = 課税仕入れ等に係る消費税額 × 課税売上割合

 なお、この一括比例配分方式を選択した場合には、2年間以上継続して適用した後でなければ、個別対応方式に変更することはできず、課税売上割合に準ずる割合は適用できません。

 以上より、土地仲介手数料は不動産業者にとっては、課税売上になり、手数料を支払う業者(買主にとっては、課税仕入となり、土地の購入は非課税仕入になります。

 手数料を支払う業者(売主)にとっては、課税仕入なり、土地の売却は非課税売上となるため、個別対応方式ではその仕入税額は②非課税売上げにのみ要する課税仕入れ等に係るものとして、控除することができず、一括比例配分方式ではその仕入税額のうち課税売上割合に対応する部分しか控除できないことになります。この場合、土地の譲渡は非課税取引であり、課税売上割合が低下するため、必ずしも一括比例配分方式を選択することが有利になるとは限りません。

2021年

10月

10日

不動産売買契約における固定資産税清算金の消費税について

 消費税の課税の対象は、国内において事業者が行った資産の譲渡等及び特定仕入れです。

 資産の譲渡等とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいい(消費税法2条Ⅰ⑧、Ⅱ)、特定資産の譲渡等に該当するものは除かれます(4条Ⅰ括弧書)。 

 したがって、課税の対象となる資産の譲渡等は、次に掲げる①~⑤の全ての要件を満たす取引をいいます。

① 国内において行う取引(国内取引)であること

② 事業者が事業として行うものであること

③ 対価を得て行うものであること(代物弁済等、みなし譲渡を含む。)

④ 資産の譲渡、貸付け及び役務の提供であること

⑤ 特定資産の譲渡等に該当しないこと

 ここで、「事業者」とは、事業を行う個人及び法人をいい(2条Ⅰ③、④)、「事業として行う」とは、資産の譲渡、資産の貸付け及び役務の提供を反復、継続、かつ、独立して行うことをいい、事業に使用していた資産の売却など事業活動に付随して行われる取引もこれに含まれます(同法施行令2条Ⅲ)。

 また、「資産の譲渡等」とは、事業として対価を得て行われる資産の譲渡及び貸付け並びに役務の提供をいいます(2条Ⅰ⑧)。

 さらに、「特定資産の譲渡等」とは、「事業者向け電気通信利用役務の提供」及び「特定役務の提供」をいいます(2条Ⅰ⑧の②)。

 では、買主が分担する不動産売買契約における固定資産税清算金(未経過固定資産税等)は、消費税法上どのように取り扱われるのでしょうか。固定資産税清算金が消費税の課税の対象となるかが問題となります。

 この点について、消費税法基本通達(10-1-6)では、「不動産売買の際に、売買当事者の合意に基づき固定資産税・都市計画税の未経過分を買主が分担する場合の当該分担金は、地方公共団体に対して納付すべき固定資産税そのものではなく、私人間で行う利益調整のための金銭の授受であり、不動産の譲渡対価の一部を構成するもの(対価として収受し、又は収受すべき一切の金銭)として課税の対象」となる、とされています。

 つまり、①国内で、②事業者が利益調整のための事業として、不動産の譲渡に伴い、固定資産税精算金を譲渡対価と別に受領している場合、③④⑤不動産の譲渡対価の一部として金銭を授受していることになるため、その固定資産税精算金相当額は、①~⑤の全ての要件を満たす取引として、消費税の課税の対象となります。

 したがって、買主が分担する土地に係る固定資産税精算金は、土地の対価の額に含まれることになり、消費税法上は非課税売上となります。一方、建物に係る固定資産税精算金は、建物の譲渡対価の額に含まれることになり、消費税法上は課税売上として取り扱われます。

2021年

9月

10日

法人税法上の寄附金と高額譲受について

 法人税法上の寄附金とは、法人が行った金銭その他の資産又は経済的な利益の供与又は無償の贈与をいい、社会通念上の寄付金の概念よりその範囲は広くなっています(37条)。 

 法人税法上の寄附金は、金銭で贈与した場合には、その金銭の額で計算し、金銭以外の資産の譲渡や経済的な利益の無償の供与の場合には、その贈与や供与の時における時価で計算することとされています(同条7項、8項)。例えば、親子会社間のように特別な関係にある者が時価より低い価額で資産の譲渡を行ったような場合で、ぞの差額が実質的に贈与したと認められるときは、その差額で計算します。

 法人が各事業年度において支出した寄附金の額の合計額のうち、その内国法人の当該事業年度終了の時の資本金等の額又は当該事業年度の所得の金額を基礎として政令で定めるところにより計算した金額を超える部分の金額は、当該内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しないとされています(同条1項)。

 普通法人に適用される一般の寄附金の損金算入限度は、次に掲げる①資本金基準額と②所得基準額の合計額の4分の1に相当する金額として計算され、この限度額を超える部分の金額は損金の額に算入されません(法人税法施行令73条1項)。

① 当該事業年度終了の時における資本金等の額(当該資本金等の額が零に満たない場合には、零)を12で除し、これに当該事業年度の月数を乗じて計算した金額の1,000分の2.5に相当する金額

② 当該事業年度の所得の金額の100分の2.5に相当する金額

 ここで、法人が資産を高額で譲受けた場合には、低額譲渡と異なり、当該資産の「購入の代価」をどのように評価すべきかについては、法人税法や法人税法施行令に直接の規定は設けられていません

 しかし、東京地裁(令和元年10月18日)は、不動産業を営む法人が他の法人から時価を超える価格で購入した土地を売却し、購入価額全額を売上原価として損金に算入した場合において、法人税法37条7項及び8項の規定の解釈に基づいて、法人が時価よりも高額の売買代金により不動産等の資産を購入した場合も、売買代金と時価との差額は買主たる法人から売主に「供与」された「経済的な利益」であり、そのうち「実質的に贈与又は無償の供与をしたと認められる金額」は「寄附金の額」に該当することになるので、損金算入限度額を超えて損金の額に算入されないとしています。

 そして、当該対価の額と当該資産の時価との差額について、その全部又は一部が「寄附金の額」と評価される場合には、損金の額への算入が制限されることとなり、そのような扱いを受ける当該差額は、当該資産の販売の収益に係る費用として当然に損金の額に算入される「売上原価」とは異質なものといわざるを得ず、「売上原価」とは異なる費用又は損失の額として別途損金該当性を判断すべきものとしています。

2021年

8月

10日

棚卸資産の評価損について

 棚卸資産とは、商品、製品その他の資産で棚卸しをすべきもの(有価証券及び短期売買商品を除く。)をいいます(法人税法2条20号)。この棚卸しをすべきものとは、販売のために保有される物品や販売を目的とする製品の製造のために使用される物品をいいます。 

 法人が所有する棚卸資産の時価が帳簿価額を下回った場合に、その棚卸資産の評価替えをしてその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分について棚卸資産の評価損が発生します。会社法及び会社計算規則では、資産の評価は取得原価主義を原則としながら、株主、債権者及び利害関係人の保護を目的とする保守主義の原則から、未実現の損失を積極的に認識させ、企業利益に反映させることとしています。

 これに対して法人税法は、資産の評価換えに基づく課税所得の恣意的調整の防止等を考慮する立場から、あくまで取得原価主義を適用することを原則としており、資産の評価換えによる評価損は、災害による著しい損傷その他特別の事実が生じた場合などを除き、原則として 損金の額に算入しないこととしています(33条1項)。

1.法人税法

(資産の評価損の損金不算入等)

第三十三条 内国法人がその有する資産の評価換えをしてその帳簿価額を減額した場合には、その減額した部分の金額は、その内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入しない

2 内国法人の有する資産につき、災害による著しい損傷により当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったことその他の政令で定める事実が生じた場合において、その内国法人が当該資産の評価換えをして損金経理によりその帳簿価額を減額したときは、その減額した部分の金額のうち、その評価換えの直前の当該資産の帳簿価額とその評価換えをした日の属する事業年度終了の時における当該資産の価額との差額に達するまでの金額は、前項の規定にかかわらず、その評価換えをした日の属する事業年度の所得の金額の計算上、損金の額に算入する。       

2.法人税法施行令

 法人税法第33条第2項(資産の評価損の損金不算入等)に規定する政令で定める事実は、物損等の事実(次の各号に掲げる資産の区分に応じ当該各号に定める事実であって、当該事実が生じたことにより当該資産の価額がその帳簿価額を下回ることとなったものをいう。)及び法的整理の事実(更生手続における評定が行われることに準ずる特別の事実をいう。)とする。

一 棚卸資産 次に掲げる事実

イ 当該資産が災害により著しく損傷したこと。

ロ 当該資産が著しく陳腐化したこと。〔法人税法基本通達9-1-4〕

ハ イ又はロに準ずる特別の事実〔法人税法基本通達9-1-5〕

3.法人税法基本通達

(棚卸資産の著しい陳腐化の例示)

9-1-4 法人税法施行令第68条第1項第1号ロ(評価損の計上ができる著しい陳腐化)に規定する「当該資産が著しく陳腐化したこと」とは、棚卸資産そのものには物質的な欠陥がないにもかかわらず経済的な環境の変化に伴ってその価値が著しく減少し、その価額が今後回復しないと認められる状態にあることをいうのであるから、例えば商品について次のような事実が生じた場合がこれに該当する。

(1) いわゆる季節商品で売れ残ったものについて、今後通常の価額では販売することができないことが既往の実績その他の事情に照らして明らかであること。

(2) 当該商品と用途の面ではおおむね同様のものであるが、型式、性能、品質等が著しく異なる新製品が発売されたことにより、当該商品につき今後通常の方法により販売することができないようになったこと。

(棚卸資産について評価損の計上ができる「準ずる特別の事実」の例示)

9-1-5 法人税法施行令第68条第1項第1号ハ(棚卸資産の評価損の計上ができる事実)に規定する「イ又はロに準ずる特別の事実」には、例えば、破損、型崩れ、たなざらし、品質変化等により通常の方法によって販売することができないようになったことが含まれる。

(棚卸資産について評価損の計上ができない場合)

9-1-6 棚卸資産の時価が単に物価変動、過剰生産、建値の変更等の事情によって低下しただけでは、法人税法施行令第68条第1項第1号(棚卸資産の評価損の計上ができる事実)に掲げる事実に該当しないことに留意する。

2021年

7月

10日

吸収合併の会社法手続及び届出について

1.合併の概要

 合併とは、2つ以上の会社が契約によって1つの会社に合体することをいいます。会社法上、合併は吸収合併と新設合併に分けられます。吸収合併とは、会社が他の会社とする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併後存続する会社に承継させるものをいいます(会社法2条27号)。新設合併とは、2以上の会社がする合併であって、合併により消滅する会社の権利義務の全部を合併により設立する会社に承継させるものをいいます(同条28号)。

 合併による解散は、消滅会社が解散とともに清算手続を経ないで直ちに消滅する点で、会社が事業活動を停止し、会社を清算する場合の原則的な清算手続による解散の場合と異なります。実務上は、新設合併の場合、事業について主務官庁の免許・許可の再取得や再度の株式の上場手続が必要となるため、対等合併であっても吸収合併の方法を選択することが多くなっています。

2.吸収合併の手続

(1)会社は、他の会社と合併をすることができますが、合併をする会社は、合併契約を締結しなければなりません(748条)。

(2)合併をする会社は、合併契約に関する書面等を備え置き、株主及び会社債権者の閲覧等に供しなければなりません(782条(会社規則182条)、794条(会社規則191条))。

(3)合併をする会社は、株主総会の特別決議による承認を受けなければなりません(会社法783条1項、309条3項2号)。

① 存続会社が特別支配会社である場合(468条1項かっこ書、会社規則136条)には、株主総会の決議は不要です(会社法784条1項本文)。

② 消滅会社が特別支配会社である場合(468条1項かっこ書、会社規則136条)には、株主総会の決議は不要です(会社法796条1項本文)。

 ただし、消滅会社の株主に対して交付する金銭等の全部又は一部が存続会社の譲渡制限株式である場合であって、存続会社が公開会社でない場合には、株主総会の決議を省略できません(同項ただし書)。 

 また、存続会社において、承継させる資産の額(簿価)が、分割会社の純資産額(会社規則187条)の5分の1以下(定款で厳格化することができます)の場合には、差損が生じる場合(796条2項ただし書、795条2項)を除いて、株主総会の決議が不要になります(会社法784条2項)。

(4)株式会社は、会社債権者異議手続の対象となる債権者がいる場合には、一定事項を官報に公告し、かつ、知れている債権者には各別にこれを催促しなければなりません(789条2項、799条2項)。

(5)会社債権者異議手続が終了していないとき又は吸収合併を中止したときを除き、存続会社は合併契約で定められた合併の効力発生日(749条1項6号)に消滅会社の権利義務を承継します(750条1項、6項)。

(6)存続会社は、合併契約に関する事項を記載した書面等を備え置き、株主及び会社債権者の閲覧等に供しなければなりません(801条、会社規則200条)。

(7)会社が吸収合併をしたときは、その効力が生じた日から二週間以内に、その本店の所在地において、吸収合併により消滅する会社については解散の登記をし、吸収合併により存続する会社については変更の登記をしなければなりません(会社法921条)。

3.届出

 合併当事会社は、以下の届出が必要です。合併により被合併法人は消滅するため、被合併法人の届出書は、合併法人が提出します。

(1)法人等の異動(変更)届出書

 ① 合併法人

   届出書:異動事項「合併(新設・吸収・適格・その他)」に所要事項を記載する。

   提出先:合併法人の所轄税務署、県税事務所、市役所

 ② 被合併法人

   届出書:異動事項「解散」に合併により消滅と記載する。   

   提出先:被合併法人の所轄税務署、県税事務所、市役所 

(2)給与支払事務所等の開設・移転・廃止届出書

   提出先:被合併法人の所轄税務署  

(3)給与支払報告書・特別徴収に係る給与所得者異動届

   提出先:被合併法人の異動従業員の1月1日現在の住所地の区役所・市役所   

(4)合併による法人の消滅届出書(被合併法人が消費税課税事業者であった場合)

   提出先 :被合併法人の所轄税務署

2021年

6月

10日

連結納税における合併と清算について

1.連結納税の合併と清算

 連結納税とは、親法人とその親法人による完全支配関係があるすべての子法人を一のグループとして、親法人がそのグループの所得(連結所得)の金額等を一の申告書(連結確定申告書)に記載して法人税の申告・納税を行う制度です。

 連結納税を採用している企業グループで、連結子法人を解散する場合において、合併する場合と清算する場合で会社法及び法人税法の取り扱いが異なります

2.会社法の解散事由

(1)通常の解散

 株式会社が、会社法471条(解散の事由)第1号、第2号及び第3号に規定する事由により解散する場合においては解散の登記の完了をもって解散し、同時に清算手続に入り、清算の結了によって消滅することになります(476条)。解散の登記は、解散する株式会社の第三者に対する対抗要件であるとともに、その解散自体についての要件です。

(2)合併による解散

 株式会社が、会社法471条第4号に規定する事由により解散する場合においては、合併によって消滅する株式会社の権利義務は、合併後存続する株式会社又は合併により設立される株式会社に包括承継され、清算行為を必要としないものですから、合併によって消滅する組合は解散登記の完了をもって解散し、かつ、消滅することとなります。

(3)破産手続開始の決定による解散

 株式会社が、会社法471条第5号に規定する事由により解散する場合においては、破産手続開始の決定により裁判所の監督下に入ることとなり、破産手続により破産管財人によって残務が処理され、清算行為を必要としないものですから、当該株式会社は解散及び破産終結の嘱託登記の完了をもって解散し、かつ、消滅することとなります(破産法35条)。

3.法人税法(連結納税)の取り扱い

(1)みなし事業年度

 合併の場合、みなし事業年度は、その連結事業年度開始の日から合併の日の前日までの期間(法人税法14条1項10号)であり、最終事業年度は、合併の日の前日が連結親法人事業年度終了の日である場合には、連結申告となり、それ以外の場合には、連結法人の単体申告となります(15条の2条1項)。

 清算の場合、みなし事業年度は、その連結事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間(14条1項10号)であり、最終事業年度は、残余財産の確定の日が連結親法人事業年度終了の日である場合には、連結申告となり、それ以外の場合には、連結法人の単体申告となります(15条の2条1項)。

 連結法人としての単体申告は、連結法人としての取扱いのうち一部が適用れます。

(2) 資産の移転

 合併の場合、100%親子間の合併は適格合併であるため、簿価による譲渡となります(2条12の8号、法人税法施行令4の3条2項)。

 清算の場合、資産の処分損益が益金・損金に算入されます。

(3)債務免除益

 合併の場合、債務免除益は計上されません

 清算の場合、債務免除益が益金に算入されます

(4)繰越欠損金

 合併の場合、最終事業年度において繰越欠損金(連結法人の単体申告の場合)又は連結欠損金個別帰属額(連結申告の場合)が繰越控除されます(法人税法57条6項、81の9条1項、法人税法施行令155の21条2項3号)。

 清算の場合、最終事業年度において繰越欠損金(連結法人の単体申告の場合)又は連結欠損金個別帰属額(連結申告の場合)が繰越控除されます(法人税法57条6項、81の9条1項、法人税法施行令155の21条2項3号)。

(5)特例欠損金

 清算の場合、会社更生等による債務免除等があつた場合の欠損金の損金算入が認められます(法人税法81の3条、59条2項3項)。

(6)欠損金の繰戻還付

 どちらの場合でも、一部の例外を除いて連結欠損金及び単体欠損金の繰戻還付は適用できません(80条1項4項、81の31条1項4項)。 

2021年

5月

10日

連結子法人が合併により解散した場合の取り扱い

 連結親法人が連結子法人を吸収合併した場合には、その資産等の引き継ぎ等については、原則として単体納税における合併と同様の取り扱いを受け、通常は100%親子会社間合併のため適格要件を満たし(法人税法2条12の8号、法人税法施行令4の3条2項)、適格合併として処理されます(法人税法62の2条、67の7条1項)。 

 連結子法人の合併による解散があった場合には、その合併の日において、その連結子法人の連結納税の承認が取り消されたものとみなされます(4の52条4項)。

 また、連結子法人が連結事業年度の中途において合併により解散した場合には、みなし事業年度が生ずることとなり(14条1項9,10号)この期間は、連結事業年度に含まれないこととされています(15の2条1項2号)。

 したがって、当該連結子法人は合併した日の前日の属する連結事業年度開始の日から合併の日の前日までのみなし事業年度について、連結法人として単体申告を行うこととなります。なお、合併日の前日が連結事業年度終了日である場合には、合併日の前日までは連結事業年度となり、連結申告を行うことになります(15の2条1項かっこ書)。

 「連結法人としての単体申告」とは、連結納税の承認は有効であっても他の連結法人と申告の時期が異なることからその法人単体で申告することをいい、単体申告であっても連結法人としての取り扱いのうちの一部が適用されます。例えば、連結申告特有の所得の合算等は適用されませんが、連結納税グループ内の金銭債権に対する貸倒引当金の繰入は不可とする規定などは適用されることになります。

 最後事業年度に当該連結子法人に所得が発生した場合には、当該連結子法人の連結欠損金個別帰属額を単体納税の繰越欠損金とみなして繰越控除を行うことができますが(57条6項)、他の連結法人の連結欠損金個別帰属額を控除することはできません。また、連結子法人で最後事業年度に欠損が発生した場合には、その欠損金額を合併の日の属する連結事業年度において合併法人である連結親法人の損金に算入することができます(81の9条4項)。

 連結納税中に繰り延べた譲渡損益がある場合には、完全支配関係のあるグループ内の適格合併により解散する場合を除き、それを計上しなければなりませんが(61の13条3項)、当該連結子法人が関税支配関係のあるグループ内の適格合併により解散する場合には、譲渡損益は合併法人である連結親法人に引き継がれ、被合併法人である連結子法人において譲渡損益の戻し入れは行わず、合併法人において譲渡等が実現するまで繰り延べることになります(61の13条3項1号)。

 解散が合併又は破産手続開始の決定による解散ではない場合には、連結子法人の連結納税の承認が取り消されることはなく、また、みなし事業年度が生じないことから、連結親法人は、解散日を含む連結事業年度において、連結子法人の個別益金額又は個別損金額などを含めて連結確定申告を行うこととなります。連結子法人の残余財産の確定があった場合には、その残余財産の確定の日の翌日において、連結子法人の連結納税の承認が取り消されたものとみなされます(4の52条4号)。

 連結子法人の連結事業年度の中途において残余財産が確定した場合には、その連結事業年度開始の日から残余財産の確定の日までの期間について、みなし事業年度が生ずることとなり(141条10号)、この期間は、連結事業年度に含まれないこととされています(15の21条2号)。

 連結子法人が吸収合併により消滅した場合、当該連結親法人は、「連結完全支配関係を有しなくなった旨を記載した書類」を遅滞なく、所轄税務署長に提出しなければなりません。

2021年

4月

10日

源泉所得税の納期の特例と不納付加算税について

 給与、報酬などの特定の所得の支払者が、その所得の支払をする際に、所定の方法により所得税額を計算し、支払金額からその所得税額を差し引いて国に納付する制度を、「源泉徴収制度」といいます。

 源泉所得税は、原則として徴収した日の翌月10日が納期限となっていますが、源泉所得税の納期の特例の承認に関する申請を行うことにより、給与の支給人員が常時10人未満である源泉徴収義務者は、給与や退職手当、税理士等の報酬・料金について源泉徴収をした所得税及び復興特別所得税について、次のように年2回にまとめて納付できるという特例制度を受けることができます。

・1月から06月までに支払った所得から源泉徴収をした分:当年7月10日

・7月から12月までに支払った所得から源泉徴収をした分:翌年1月20日

 ここで、源泉徴収等による国税が法定期限内に納付されなかった場合について、国税通則法第67条には、以下のように規定されています。

 「源泉徴収等による国税がその法定納期限までに完納されなかった場合には、税務署長又は税関長は、当該納税者から、納税の告知(第36条第1項(納税の告知)の規定による納税の告知(同項第二号に係るものに限る。)をいう。次項において同じ。)に係る税額又はその法定納期限後に当該告知を受けることなく納付された税額に100分の10の割合を乗じて計算した金額に相当する不納付加算税を徴収する。ただし、当該告知又は納付に係る国税を法定納期限までに納付しなかったことについて正当な理由があると認められる場合は、この限りでない。

2 源泉徴収等による国税が納税の告知を受けることなくその法定納期限後に納付された場合において、その納付が、当該国税についての調査があったことにより当該国税について当該告知があるべきことを予知してされたものでないときは、その納付された税額に係る前項の不納付加算税の額は、同項の規定にかかわらず、当該納付された税額に100分の5の割合を乗じて計算した金額とする。

3 第1項の規定は、前項の規定に該当する納付がされた場合において、その納付が法定納期限までに納付する意思があったと認められる場合として政令で定める場合に該当してされたものであり、かつ、当該納付に係る源泉徴収等による国税が法定納期限から1月を経過する日までに納付されたものであるときは、適用しない。」

 納期の特例を受けている場合、不納付加算税の対象金額が半年分と多くなりますが、同条第2項では、納税の告知を受けることなく自主的に納付した場合は、10%ではなく、5%の不納付加算税が課せられ、同条第1項及び第3項では、①正当な理由があると認められる場合、②法定納期限までに納付する意思があったと認められ、かつ1月以内に納付した場合には、不納付加算税が課されないこととされています。

 ①の正当な理由があると認められる場合とは、例えば、源泉徴収義務者の責めに帰すべき事由のない場合や災害、交通・通信の途絶その他法定納期限内に納付しなかったことについて真にやむを得ない事由があると認められる場合ですが、税法の不知若しくは誤解又は事実誤認に基づくものはこれに当たりません(事務運営指針)。

 ②の期限内申告書を提出する意思等があったと認められる場合とは、法定納期限の属する月の前月の末日から起算して1年前の日までの間に法定納期限が到来する源泉徴収等による国税について、納税の告知を受けたことがなく、かつ納税の告知を受けることなく法定納期限後に納付された事実がない場合をいいます(同法施行令第27条の2)。

2021年

3月

10日

青色申告特別控除について

 青色申告は、一定水準の記帳をし、その記帳に基づいて正しい申告をする人については、所得金額の計算などについて有利な取扱いが受けられる申告の制度で、青色申告をすることができる人は、不動産所得、事業所得、山林所得のある人です。

 青色申告の記帳は、年末に貸借対照表と損益計算書を作成することができるような正規の簿記によることが原則ですが、現金出納帳、売掛帳、買掛帳、経費帳、固定資産台帳のような帳簿を備え付けて簡易な記帳をするだけでもよいことになっています。

 青色申告者に対しては種々の特典がありますが、その一つに所得金額から最高65万円又は10万円を控除するという青色申告特別控除(租税特別措置法25条の2)があります。

1.55万円の青色申告特別控除

 この55万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

(1)不動産所得又は事業所得を生ずべき事業を営んでいること。

(2)これらの所得に係る取引を正規の簿記の原則(一般的には複式簿記)により記帳していること。

(3)(2)の記帳に基づいて作成した貸借対照表及び損益計算書を確定申告書に添付し、この控除の適用を受ける金額を記載して、法定申告期限内に提出すること。 

 不動産所得の金額又は事業所得の金額の合計額が55万円より少ない場合には、その合計額が限度になります。ただし、この合計額とは損益通算前の黒字の所得金額の合計額をいい、いずれかの所得に損失が生じている場合には、その損失をないものとして合計額を計算します。控除の順序は、不動産所得の金額、事業所得の金額から順次控除(同法基本通達25の2-1)します。

2.65万円の青色申告特別控除

 この65万円の控除を受けるための要件は、次のようになっています。

(1)上記1の要件に該当していること

(2)次のいずれかに該当していること

① その年分の事業に係る仕訳帳及び総勘定元帳について、電子帳簿保存を行っていること(電子帳簿保存法施行規則第3条第1項参照)。

② その年分の所得税の確定申告書、貸借対照表及び損益計算書等の提出を、確定申告書の提出期限までにe-Tax(国税電子申告・納税システム)を使用して行うこと。

3.10万円の青色申告特別控除

 この控除は、上記1及び2の要件に該当しない青色申告者が受けられます。

4.留意点

 不動産所得を生ずべき業務が、事業的規模で行われていない場合には、1(2)の「事業」に該当しない(所得税法基本通達26-9)ため、55万円(65万円)の青色申告特別控除を適用することはできず、10万円の青色申告特別控除が適用されることになります。ただし、不動産所得又は事業所得を生ずべき事業のいずれか一方があれば55万円(65万円)の控除を受けることができます(租税特別措置法25条の2第3項)。

 したがって、事業所得と不動産所得が両方ある場合には、不動産貸付けの規模にかかわらず、55万円(65万円)控除の要件を満たすことになります。

 なお、事業所得とは、農業、漁業、製造業、卸売業、小売業、サービス業その他の事業を営んでいる人のその事業から生ずる所得をいい、事業所得であれば1(2)の「事業」に該当することになります。

 また、いずれかの所得に損失が生じている場合には、その損失をないものとして合計額を計算しますので(同法基本通達25の2-1)、事業所得が赤字であっても。事業的規模に関わらず不動産所得から55万円(65万円)の控除を受けることができます。 

2021年

2月

10日

国税通則法の期間及び期限について

 国税通則法は、税法の一般法という地位を占めています。同法第4条(他の国税に関する法律との関係)は、この関係を明確にするため、「この法律に規定する事項で他の国税に関する法律に別段の定めがあるものは、その定めるところによる。」と規定しています。

 また、滞納処分の手続については、国税徴収法が個別に規定していますが、書類の送達、期間などの共通する事項については通則法が規定しています。これとは逆に不服審査及び訴訟については、それぞれ行政不服審査法及び行政事件訴訟法が一般法の地位にあり、その限りにおいては、国税通則法はこれらの法律の特別法となっています(通80①、114)。 

1.期間について

 期間とは、ある時点から他の時点に至る継続した時の区分をいい、国税に関する法律において、日、月又は年をもって定める期間の計算は同法10条に規定されています。ただし、「2月16日から3月15日まで」(所120①)のように、確定日から確定日までと定める期間については、期間の計算を行う必要がないので、期間計算の規定は適用されません。

(1)起算点

 期間の初日は算入しないで、翌日を起算日とするのが原則です(通10①本文)。つまり、期間計算開始の契機となる事実が発生した当日(初日)を切り捨てて、その翌日を計算上最初の1日(起算日)とします。これを初日不算入の原則といいます。「その理由のやんだ日から2月以内」(通11)という場合は、その理由のやんだ日(初日)ではなくて、その翌日が起算日となります。

 期間が午前0時から始まるとき、又は特に初日を算入する旨の定めがあるときは、初日を起算日(初日算入)とします(通10①ただし書)。「終了の日の翌日から2月以内」(法74①)という場合は、初日である終了の日の翌日の午前0時から期間が始まるため、その日が起算日となります。また、「督促状を発した日から起算して10日を経過した日」(通40)という場合は、期間の初日(起算日)を明確にしているため、その日が起算日となります。

 経過する日とは期間の末日をいい、経過した日とは期間の末日の翌日をいいます。

 以前・以後(以内)は、起算点又は期限の満了点となる日時を含みますが、前・後は、起算点又は期限の満了点となる日時を含みません。「損失を受けた日(8/15)以後1年以内に納付すべき国税」(通46①)という場合は、起算日は8/15で、満了日は翌年の8/14です。「公売の日(5/25)の少なくとも10日前までに」(徴95①)という場合は、起算日が5/24で、満了日が5/15ですから、5/14(10日前である15日の前日)が(公告)期限です。

(2)計算と満了点

 期間が月又は年をもって定められているときは、暦に従って計算します(通10①二)。 暦に従うとは、1月を30日又は31日とか、1年を365日とかというように日に換算して計算することではなく、例えば、1月といった場合は、翌月における起算日に応当する日(応当日)の前日を、1年といった場合は、翌年における起算日の応当日の前日を、それぞれの期間の末日として計算することをいいます(通10①三)。

 月又は年の始めから期間を起算するときは、最後の月又は年の末日の終了時点(午後12時)が期間の満了点です。「2月1日から3か月間」という場合は、年の平閏や月の大小にかかわらず、2月を最初の月として月数を数え、3月目の4月の末日が満了日になります。

 月又は年の始めから期間を起算しないときは、最後の月又は年において起算日の応当日の前日の終了時点が期間の満了点です(通10①三本文)。「1月15日から5か月間」という場合は、翌月から数えて5月目の6月15日が応当日となり、その前日の同月14日が満了日です。

 この場合、最後の月に応当日がないときは、その月の末日の終了時点が期間の満了点です(通10①三ただし書)。「1月31日から1か月間」という場合は、翌月の2月には応当日(31日)がなく、平年であれば同月28日(閏年であれば29日)が満了日となります。

 期間が過去に遡る場合の計算方法についての法令は存在しないため、通常の期間の計算方法に関する規定を類推適用します(通基通(徴)10-1、-2、民140、143)。その起算日が「法定納期限の1年以上前」(徴35①)のように、丸1日として計算できる場合を除き、その前日を第1日として過去に遡って期間を計算します。

2.期限について

 期限とは、法律行為の効力の発生、消滅又は法律行為や事実行為の履行が一定の日時の到来にかかっている場合における、その一定の日時をいいます。期限には、3月15日、7月31日など確定日によるもののほか、期間の末日も含まれます

 国税に関する法律に定める申告、申請、請求、届出その他書類の提出、通知、納付又は徴収に関する期限(時をもって定める期限などを除きます。通令2①)が日曜日、国民の祝日に関する法律に定める休日、その他一般の休日又は政令で定める日に当たるときは、 これらの日の翌日が期限とみなされます(通10②)。  

(略語)通=国税通則法、法=法人税法、所=所得税法、民=民法

    通令=国税通則法施行令、通基通(徴)=国税通則法基本通達(徴収部関係)

2021年

1月

10日

相続税に係る外国税額控除について

 相続税は、死亡した人(被相続人)の財産を相続又は遺贈(贈与をした者の死亡により効力を生ずる贈与を含む。)により取得した配偶者や子など(相続人等)に対して、その取得した財産の価額を基に課される租税です。

 相続税法では、他の税目に見られない特徴があり、相続又は遺贈により財産を取得した者が納付する相続税額を計算するためには、次のように4つの段階の計算が必要です。

1.第1段階課税価格の計算

 相続又は遺贈により財産を取得した者に係る課税価格(各人の課税価格)を個々に計算し、その後、同一の被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した全ての者の相続税の課税価格の合計額を計算します。

2.第2段階 (相続税の総額の計算

 課税価格の合計額から遺産に係る基礎控除額を控除した残額(課税遺産総額)を基に相続税の総額を計算します。

3.第3段階各人の算出税額の計算

 相続税の総額を各人が取得した財産の額(割合)に応じて配分し、各人の算出税額を計算します。

4.第4段階各人の納付税額の計算

 各人の算出税額から各人に応じた各種の税額控除額を控除し、各人の納付すべき税額を計算します。

 ここで、相続税の税額控除として、在外財産に対する相続税額の控除(外国税額控除)があります(相続税法20の2条)。

 同条は、在外財産に対する相続税額の控除について、「相続又は遺贈によりこの法律の施行地外にある財産を取得した場合において、当該財産についてその地の法令により相続税に相当する税が課せられたときは、当該財産を取得した者については、遺産に係る基礎控除から相次相続控除(15条から20条の2)までの規定により算出した金額からその課せられた税額に相当する金額を控除した金額をもつて、その納付すべき相続税額とする。ただし、その控除すべき金額が、その者についてこれらの規定により算出した金額に当該財産の価額が当該相続又は遺贈により取得した財産の価額のうち課税価格計算の基礎に算入された部分のうちに占める割合を乗じて算出した金額を超える場合においては、その超える部分の金額については、当該控除をしない。」と規定しています。

 これは、いわゆる国際二重課税の緩和規定であり、外国税額控除の適用を受けることができる者は、次の要件に該当する者です。

(1)相続又は遺贈(相続開始の年にその相続に係る被相続人から受けた贈与を含む。)により財産を取得したこと

(2)取得した財産は、法施行地外に所在するものであること

(3)取得した財産について、その財産の所在地国において相続税に相当する税が課税されたこと

 また、外国税額控除による控除額は、次の(1)または(2)のいずれか少ない金額となります。

(1)財産の所在地国で課せられた税額

(2)相続税額×分母のうち国外財産の価額÷相続税の課税価格計算の基礎に算入された財産の価額

 相続税の税額控除等は、贈与税額控除、配偶者に対する相続税額の軽減、未成年者控除、障害者控除、相次相続控除、在外財産に対する相続税額の控除の順序で行われ、先順位の税額控除をして、相続税額が零となる場合又は当該税額控除の金額が控除しきれない場合は、後順位の税額控除をすることなく、その者の納付すべき相続税額はないものとなります(同法基本通達20の2-4)。